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YsIV
MASK OF THE SUN
-a new theory-

 ほぼ10年という歳月を経て、ついに登場した第三のイースIVです。(小説版を含めれば第四)
 直前に発売されたイースIIIはあまり良い出来ではなかったですし、今回ははっきりした原作が存在せず扱いが難しいイースIVです。
 恐らくSFC版にそこそこ手を加えた程度のもので、あまり期待してもがっかりするだけだろうと半ばあきらめていましたが…。見事にその予想を外してくれました!
 特にシナリオへの力の入れようは凄まじいものがあります。サブタイトルに新説(new theory)と付されているのはダテではありませんでした。

 今作の特筆すべきポイントは何はともあれシナリオでしょう。
 発売前には、原案シナリオに近づけて手堅く「真のイースIV」を目指しているのだろうと思っていました。それはそれで見てみたかったのですが、本作はそういう手堅い作りではありません。極めて大胆にアレンジの施された野心作と呼ぶべきものでしょう。
 序盤では原案に近い流れであるためにあまり違いを意識しませんが、同じ出来事のように見えていたものでも理由付けが違いますし、登場人物の設定もほとんど手が加えられています。サブタイトルである「太陽の仮面」の定義すら変わっており、従来のイースIVを知る人ほど意外な展開の数々に驚くことでしょう。
 しかしそれほど変わっていれば普通は違和感を感じるものです。実際、PCE版の後にSFC版をプレイしたときにはかなりの違和感がありました。当然ながら、今回のPS2版でも違和感がまったくないわけではありません。ですが、それを吹き飛ばしてしまうほどキャラクターやシナリオ展開が魅力的で、一気に引き込まれていきました。
 会うたびに違う一面を見せるカーナ、今までになかった手法で健気さが表現されたリーザ、圧倒的に格好よくなったグルーダ、出番がそれほど多くなったわけでもないのにPCE版よりも存在感の増しているバミーやガディス…。どのキャラクターも本当にうまくアレンジが施されていました。
 加えてイースVIの設定を織り込んで根本から再構成された設定も、他機種版と整合しないにもかかわらず、かなりの説得力を持っています。
ついにイース4も3Dに!
▲今回の闇の一族は一味違います 
▲広い洞窟ではかなり迷うことに…
 
 ここまで大胆なアレンジに踏み切った上に、イースのシナリオに並々ならぬこだわりのある筆者を納得させるほどのパワーを持ったものを書き上げるとは、恐らく相当の力を入れていたのでしょう。

 では、ゲーム全体としても名作と呼べるかというと、残念ながらそうではありません。
 恐らく「シナリオ」の段階では完璧に近いものだったのでしょうが、ゲームとして仕上げる段階であちこちに問題点ができてしまっています。特にシーンのつなぎなどに説明不足の部分が多々あり、それがシナリオの説得力をそいでしまっています。
 ライターの方がゲームとしての体裁が整ってからチェックを行っていないのか、あるい時間的な都合で荒い仕上げになってしまったのか、はっきりとした要因は分かりませんが、せっかくシナリオ自体の出来が良いだけにもったいないポイントです。

 3D化や聖剣とエレメントなどのシステムについて、果敢に従来作と違うものに挑戦した点で評価はしたいのですが、その出来ばえは「並」の範囲を出るものではありませんでした。
 また、セーブの仕様が大きな不満点となりました。洞窟などのマップが広くて単調なため、非常に迷いやすくマッピングするのも困難なのですが、洞窟内ではセーブできず、ボスの手前にですらセーブポイントはありません。ボス戦で負けてもクイックセーブのようなものもなく、最後にセーブしたポイントまで戻されてしまいます。ボスと再戦するためには、経験値もアイテムも失って、またも広い洞窟をさまよわねばならないわけです。
 ロード時に、セーブした位置から始まらずに、そのマップ内に入ってきた位置に戻されるという奇怪な仕組みになっているのも難点です。セーブデータを小さくするためかもしれませんが、かなり分かりづらい仕様です。
 アクション性についてもあまり高い評価はできないでしょう。ボス戦は弱点さえ見極めれば数発で倒せる難易度になっており「ヒット&アウェイ」で戦うようにはなっていません(上記のようにボス直前でセーブできない仕様なので、あまり難易度を上げられなかったのかもしれません)。ザコ戦においても弱・中・強の三段階に分けられた攻撃法や、必殺技・剣の使い分けといったシステムが十分に機能しているとは言えず、アクション性は完成しきっていないという印象を受けます。
 BGMはIIIと同様、内臓音源によるものです。PCE版のような派手さはありませんが、しっかりと作られており、聞いていて飽きないものでした。

 このようにゲーム全体としては荒さの目立つ作品でした。
 ですが、そんなことが些細に思えるほど、シナリオの優れた作品です。
 イースIVのシナリオに長年こだわり続けてきた筆者にとって、これこそまさに待ち望んでいたイースIVと言えるものでした。
 この「新説・イースIV」は、すでにイースを知り尽くしたイース・ファンにこそ体験してほしい一作です。

タイトーのイースIVの公式サイト


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