フィーナの記憶

 OVAやエターナルにおいて、イース1のフィーナは実際に記憶喪失であったものとして扱われています。では、原作であるPC-88版でもそうだったのでしょうか?
 断定は出来ないものの、原作の意図としては「記憶喪失は演技」という可能性の方が高いのではないかと考えられます。その理由はイース2におけるフィーナとアドルの会話です。

 まず再会したときにフィーナは「これまで、女神であることを隠してきてごめんなさい。」とアドルに謝っています。原作のイース1でフィーナの台詞は神殿での救出時と、救出後のジェバの家での2種類しか存在しません。もしこの段階で本当に記憶喪失であったならば、「隠してきた」というタイミングが存在せず謝罪は必要ないはずです。
 イース2において女神として語りかけたときのことを指しているという解釈も可能ですが、その場合「(フィーナとして話しているときに)女神であることを隠してきた」のではなく、「(女神として話しているときに)フィーナであることを隠してきた」ということになり、台詞のニュアンスとややズレがあるように思われます。また仮にこの解釈の通りであるなら、まずは記憶が戻ったことを報告して記憶喪失のことを心配しているであろうアドルを安心させようとするのが自然な流れではないか、という気がします。

 次に、最終決戦後のフィーナは「神殿の地下で助けられたとき、ジェバの家で過ごしたときに、イースが過去の国だと悟った」「アドルとは初めて普通の女の子として話せた気がした」という内容を語っています。
 これらは神殿での救出時に古代王国イースを知っていたこと、アドルと話したときに自分が普通の女の子ではないことを知っていたことを示しており、フィーナが本当に記憶喪失であったなら抱き得ない感想であるはずです。

 このように原作のフィーナの台詞は、記憶喪失が演技であったことを前提にして書かれていると思われます。
 もしこの結論が正しければ、PC-88版とエターナルとでは、フィーナにとってアドルと過ごした時間の意味が全く異なっているということになるのかも知れません。
 PC-88版などの旧作イース1、イース2をプレイする時には、エターナルとは一線を画するフィーナの心情に思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。

 
 
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