ワンダラーズ・フロム・イース(PC-88版)

 ワンダラーズ・フロム・イース(イース3)では、画面が前作までのトップビューからサイドビューに様変わりし、ストーリー的にもイースとは関わりのないものとなっており、シリーズ中でも独自色の強い作品となっています。しかしその完成度は極めて高くファルコム作品の最高傑作の一つだと思います。
 
 まず目に付くのは背景の最大4重(4MHzの機種では最大3重)の多重スクロールですが、それ以外にも8方向スクロールや、背景の細かい演出が場面によって使い分けられています。モンスターの歩行グラフィックも基本的に3パターンで作られているためか、ソーサリアンなど他のサイドビュー作品と比べるとかなり動きが滑らかに感じられます。操作性も極めて良好で、アドルの多彩なアクションを思い通りに操ることができます。
 ストーリー面では、アドル自身のセリフを多用することで、アドルの挫折やそこからの精神的な成長を描く作品となっています。また登場人物の数は少ないものの、その分、個々の主要人物の描写が深くなっています。
 特にヒロインであるエレナは、かなり特徴的なキャラクターとなっています。モンスターの徘徊する危険な場所でも躊躇なく一人で探索したり、アドルを襲おうとしていた準ラスボスを脅しつけて隠し通路を作動させるなど、見た目に反して男勝りな行動が強調されています。しかしその行動の原動力となっているのは兄チェスターへの強い兄妹愛ですし、終盤では自分を捕らえている魔王とも分かり合えるはずだと主張するなど、強さの中にも優しさを秘めているキャラクターとなっています。
 これらのゲームシステムやストーリー性に加えて、グラフィックの美しさや、BGMの素晴らしさが相まって、総合的に非常に完成度の高い作品となっています。また現在の大作RPGと比較するとプレイ時間はかなり短めなので、気軽にプレイしやすい作品です。
 
 本作には難易度設定があり、ノーマル以外にイージー、ハードを選択することも可能です。ハードにすると被ダメージの無敵時間がほとんど無くなり、連続でダメージを受けやすくなります。アドルに向かって来る敵に接触してしまうと、あっという間にHPが削られるため、ある程度レベルが上げても油断できない難易度となっています。

▲オープニングから多重スクロール!
▲エレナは兄チェスターの行方を探している。
▲白熱のボス戦。難易度をハードにするとかなり難しい。
▲本作にはアドルのセリフがたくさんある。
▲襲いかかる溶岩。多重スクロール以外にも様々な演出がある。
▲サイドビューを活かした夕焼けのシーンが素晴らしい。
 なおリメイク作品である「フェルガナの誓い」は、サイドビューの廃止、アドルのセリフのカット、エレナの性格の一般的なヒロイン寄りへの変更、ラスボスが生物ではなくなるなど、ワンダラーズ・フロム・イースの根幹となっていたはずのシステムや設定が継承されませんでした。このため原作とは完全に別の作品となっています。ぜひフェルガナの誓いをプレイ済みの方にも、ワンダラーズ・フロム・イースをプレイしていただきたいです。
 
 
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