イース

 シリーズの原点である88版イースのレビューです。実機でもプレイ済みなのですが、今回はイース6特典のイース大全集で再プレイした上でのレビューです。(Windows10では正常動作しなかったのですが、実行ファイルにWindows98互換モードを設定したところ、最後までプレイ可能になりました)
 イースは主に太陽の神殿の開発スタッフによって製作されたようですが、太陽の神殿と比較すると、グラフィック、シナリオ、サウンドなどあらゆる面で格段の進歩を遂げています。
 マップ画面のグラフィックはわずか8色を駆使して非常に精緻に描かれており、通行可能設定もしっかりと見た目の通りになっているため、木々の間を通り抜けたり、建物の陰を通行することも可能です。惜しいのは、せっかくの綺麗なグラフィックも、スクロールすると画面が波打つように崩れてしまうところですね。
 すべてのアイテムがグラフィックで表示される持ち物画面など、インターフェースは非常に分かりやすく仕上がっています。
 FM音源を駆使したBGMはどの曲も素晴らしい出来映えです。
 このようにイースは各要素が総じて当時の水準を上回っている作品ですが、それ以外にも大きな特徴があります。それは、クリア不可能な状態となってしまう「ハマリ(詰み)」が廃止されていることです。現在のARPGやRPGではむしろハマリのあるゲームのほうが少ないですが、当時のファルコム作品(太陽の神殿、ロマンシアなど)では、むしろハマリはあって当然で、何度も最初からプレイし直していくうちに、どうして進行不能になったのかを発見すること自体がゲームとしての大きな部分を占めていたようです。これに対してイースでは基本的に最初からのやり直しは発生しない設計となっており、この点で当時としては非常に親切なゲームであったと思われます。
 しかし全体的に現在の水準に近い親切設計であることから、逆に現在の水準に満たない細部の出来が気になってしまいます。たとえば町の人には正面以外から話しかけられなかったり、すでに所持している装備品を購入することができてしまったり(売却できないため2つ目は何の役にも立たない)、WINGなどの消耗アイテムの値段が異様に高かったりすることなどです。あとはセーブデータがディスク一枚に1つしか作れないというのも、ちょっと不便なところです。
▲同じ物を買わないように注意!
▲緻密に描かれたグラフィック。
▲一目で分かる持ち物一覧画面。
▲デカキャラ戦は攻略法を見極めないとなかなか勝てない。
▲盗賊に恐れをなすアドルのセリフ。原作にはアドルのセリフがいくつかある。

 また親切設計になっているとは言え、必ずしもゲームとして簡単というわけではありません。たとえばレベルが中盤でMAXとなってしまうことから、レベルを余分に上げてクリアするということはできず、3戦目以降のボス戦は純粋なアクションゲームとしての要素が非常に強く、これに勝たないことには先へ進むことができなくなります。さらに当時としては普通以下の難易度だったと思われる謎解きも、現在では難しい部類に入ります。このため現在は一般的となっている誰でもクリアできることを前提としたゲームとは一線を画しており、むしろアクション性や謎解きにある程度のやり応えを求めるプレイヤーに最適の難易度であると言えるでしょう。
 さすがに今となっては、あえて88版をお勧めする理由はあまり見当たりませんが、シリーズの本当の意味での原点に興味のある方はイース大全集やプロジェクトEGGでプレイしてみてはいかがでしょうか。
 
 
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