イース

 他社移植イースの第一弾であるファミコン版のイース1です。
 2MビットROMカセットということで容量的には原作よりも厳しいと思われますが、室内の一枚絵やマップチップなどグラフィックが極端に削られていると言うことはありません。
 ファミコンのスプライト機能やスクロール機能により、(やや遅いものの)動きは滑らかです。ただし、グラフィックの重ね合わせ処理でスプライトを後ろにすることが難しいためか、木や建物などの裏は通れなくなっています。ファミコンではよくある仕様なのですが、パソコン版に慣れていると木の間がすごく通りづらく感じます。またザコ敵との戦闘での処理がかなり異なっているため、パソコン版と同じように攻撃した場合でも感触はかなり異なっています。とは言え、このあたりは原作を知らなければあまり問題ではなく、操作性は合格点と言えそうです。
 ボスの攻撃パターンはかなり変更されている部分が多いのですが、難易度は決して下がっておらず、かと言ってまったく勝てないわけでもなく、うまくバランスが取られています。(ただし、ピクティモス戦はかなり難しくなっています。カマが単にアドルの座標を狙ってくるだけでなく、その後アドルが移動するのと同じ方向に移動するようになっており、ピクティモスを攻撃しようとするとカマが戻ってきてしまうためです。攻略本には倒し方として悪魔の回廊を先に突破して最強装備にしてから戻ってくるようにと書かれるほどです。とは言え一応これをやらなくても何とか勝つことはできました)。
 これでシナリオが原作と変わっていなければ、良質な移植と言って差し支えない出来なのですが、シナリオはかなり変更されており、どういうわけかマップに至ってはほぼ一から作り直したとしか思えないくらいに異なっています。ターゲット層がこういう移植を望んでいたとは考えにくく、イマイチ意図がよく分からないものの、この大幅なアレンジのために移植の手間はむしろ普通以上にかけていると思われるので、質が下がっていないならばアレンジを行ったこと自体は構わないと思います。
 しかし変更点のうち、どうしても評価を下げざるを得ないのが、イース2との関連性をかなり低めてしまっているという点です。フィーナについてはイベントのカットこそありませんが、ジェバの家の一枚絵に表示されず、イースの本入手後は話しかける選択肢もなくなるため、もはやいるのかどうかも分からない状態になります。それ以上に問題なのはレアの出番がダームの塔内のみになっており、銀のハーモニカは存在すらしないことです。すでにイース2が発売されている時期の移植ですので、このあたりは何とかしてもらいたかったところです。
▲ミネアの街の様子がかなり違う。 
 
▲ミラーはなぜかずっと売り切れ。
 
▲スポット処理はしっかり再現。
 
▲もうフィーナに話しかけられない。
 
 
 BGMについては新曲が追加されている他、差し替えが数曲あります。差し替えない方が良かったと思うのですが、パソコン版のPSGの機種で差し替えられた曲は差し替えられずに残っているので良しとしたいと思います。
 全体的に単体のゲームとしては決して悪くはありません。たくさんの移植がなされた現在からすると、逆に普通の移植ではない点が興味深い作品と言えるかもしれません。
 また、ダルク=ファクトがフィーナの正体について語るセリフが追加されているのですが、これは原作で不採用になったもののソースコードに残っていたセリフを復活させたものらしく、実は資料としても貴重な移植となっています。


ファミコン版 攻略本
(本文のものとは別)
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