イースVIII
ラクリモサ・オブ・ダーナ


 本作はシステム的には前作「セルセタの樹海」の発展版となっており、大きく異なるのはジャンプが加わったことと、視点がマニュアル操作となったことです。視点を自由に回転させて景色を見回すことができるので、現在マップのはるか遠くまで描かれた景色景を堪能することができ、非常に臨場感があります。
 ただし視点が進行方向に連動しないため、左スティックで進行方向を入力するのと同時に、右スティックで視点も調整する必要があります。しかし、このとき視点が上下方向にも動くため、画面が波打つように揺れてしまい、操作に慣れるまではかなり酔いました。上下方向の回転速度を最小にすることで揺れはかなり軽減できるものの、進行方向に視点が連動するような設定も用意してほしいところです。操作は全体として複雑さが増しており、なかなか思った通りの操作はできませんでした。それでもスキルを連発しながら回復を怠らなければ、特に戦闘で苦労するということはないため、バランス調整としては問題ないのでしょう。
 今作の大きな特徴は舞台が無人島であることです。登場人物は基本的にアドルと共に漂流した人たちのみで、既存の町や村というものが出てきません。唯一、人が集まっているのが漂流者で作った拠点の村です。買い物が物々交換であったり、発見した漂流者の人数が増えると障害物を除去して探索範囲が広がるなど、無人島ならではの展開が面白いです。時々、拠点にモンスターの大軍が攻めてくる「迎撃戦」というものがあり、これに備えて防衛用設備を強化していくという要素もあります。
 ストーリーは終盤部分で盛り上がりますが、一週目クリアまでは60時間以上かかっており、終盤に至るまではかなり長く感じられました。中盤までは探索メインであること、明確な敵と言えるような存在がないこと、あまり重要度の高くない会話でも総じて長いことなどが相まって、イースらしい展開のテンポの良さが失われていると感じました。軌跡シリーズは日常を丁寧に描くのが持ち味でしょうが、この手法はイースとはミスマッチだと思います。
 
▲今回も地図作成が重要
▲遠くの景色がキレイ。
▲迎撃戦では拠点を守り抜く。
 
 
 これに加えて、最初の漂流者の登場シーンがあまりにも三流めいていたり、ヒロインの結末が某有名アニメとそっくりだったりで、物語において最も重要なはずの最初と最後に落胆させられたことも大きなマイナスポイントです。冗長なセリフではなく、メインストーリーをきちんと構築することに労力を割いてもらいたいものです。もっとも筆者にはファルコムは超一流の作品を作ろうとするメーカーだという強い思い入れがあるからこそ、三流アニメのお約束みたいな展開を見せられるとがっかりするのですが、そうではない一般ユーザーからすれば恐らく気になるような欠点ではないのでしょう。
 ゲーム自体は色々と斬新な試みもある上に、ファルコムらしい丁寧な作りも健在で、十分に良作と言えるものになっています。シナリオのマイナス要素がなければ、名作となりうる作品であったと思います。


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