英雄伝説 ガガーブトリロジー 白き魔女

 バンダイから発売されたPSP版「白き魔女」です。
 Windows版を基本としつつ、(サターン版ほどではありませんが)アレンジも色々と行われています。

 まず気になったのは、マップ上での移動速度がやや遅い、障害物を避けてしまいカウンター越しに話しかけにくい、店のメニューが表示される前に一瞬止まる、といった操作性の悪さです。個々は些細なことでも、操作性が悪いと結構ストレスがたまってしまいます。

 アレンジされた要素で真っ先に目に付くのは、フィールドが3D化されていることです。見えるべき場所が壁などの陰になっている場所があったりと良いことばかりではありませんが、許容範囲の変更でしょう。

 問題なのは戦闘関連のシステムをがらりと変更している点です。戦闘発生がシンボルエンカウント方式になったのはまだ良いとしても、通常攻撃しかしてくれない中途半端なオート戦闘、貧弱な割に異常に長い魔法・必殺技のエフェクト(しかも、その間は他の動作がすべて止まる)、戦闘後にHP・MPが回復しなくなっているのに適切な配置がされていない回復場所、などなど……。根本的にまったく異なるシステムとなっているだけでなく、完成度が初期PC-98版よりもはるかに退化しています。机上で作った仕様書を何も考えずにそのままプログラムしただけなのではないかという雰囲気で、面白くしようとしたとは到底思えません。制作費や開発能力が足りないなら、無理に手を加えずWindows版をそのまま移植すれば良いのに、なぜこういう意味不明なアレンジをしようとするのでしょうか。
▲3D化されたフィールド。 
▲独自の戦闘システム。
▲多数の人物に用意されたイラスト。
 またペットによってアイテムを取得できるシステムは、恐らく回復場所の補充的な意味合いで追加されたのでしょうが、条件が非常に分かりづらく有効に活用することはできませんでした。

 それに比べるとシナリオ面は、多少カットされた部分はあるものの、概ね原作に忠実な移植となっており、及第点を与えられるレベルになっています。
 調べられる場所にアイコンが表示され、重要イベントの場合は「!」マークも表示されるため、どうすればストーリーが進むのか迷うことはあまりなくなりました。これは良いアレンジだと思いますが、一部のイベントが簡単になりすぎてしまうのが難点です。
 特筆すべきは多数のキャラクターに、原作でもイラストなどを担当していた岩崎美奈子さんによる顔グラフィックが用意されていることです。サターン版のキャラデザを受け入れ難く感じた人でも安心してプレイできるでしょう。
 新規に作られたオープニングアニメも良くできていたと思いますが、元々のオープニングも残しておいて欲しかったです。

 全体として、悪い意味での他社移植の代表例と言わざるを得ない出来です。しかし、岩崎美奈子さんのキャライラストに価値を感じる人には、それを補うほど貴重な一作と言えるでしょう。

 
 
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