YsV
LOST KEFIN,KINGDOM OF SAND
「新生イースVが新たなる感動の旅へ誘う」
これが公式サイトに掲げられたコピーです。イース4並みのシナリオとなっていれば適切なコピーでしょうが、開発期間から考えると大半のスタッフは別である可能性が高いです。率直に言って、このコピー通りであることはないだろうと思っていました。しかし、今回もその予想は外れることになりました。
シナリオはSFC版を基調としてはおらず、ほぼ原案(イースV原案は「イース大全集」に収録されています)に近い形となっています。SFC版の設定を組み入れたり、エメラス・有翼人関連の設定を取り入れたりと、原案をさらに発展させたものと言えるでしょう。
そうしたアレンジが非常にうまくまとまっていて、終盤の盛り上がり方がとても秀逸です。この点に関しては各社のイース全作品の中でも、一、二を争う出来だったと思います。
ただ全体としては良かったシナリオですが、個々のセリフはおかしな文法や不自然な表現が多く、せっかくのシナリオの価値を低下させてしまっているのが惜しいところです。
マーシャの声が大事なところで妙に早口だったり、異常に高揚していたりして、キャラのイメージに合っていないのもマイナスでした。
キャラチップを用いた演出もことごとく稚拙で、フリーゲームを下回るようなレベルです。ゲームでの演出の基礎が全くできていないようです。
そして今回もシナリオ以外の部分には難点が山積みです。ゲーム全体としてはとても良作と呼べるようなものではありませんでした。
特に問題なのは操作性とマップ構成でしょう。一から作り直しているのでSFC版の欠点は引き継いでおらず、斜めジャンプ・斜め攻撃・下突き・防御しながら移動ができるようになっています。しかし、どうも操作性が良くありません。同機種にイース6という見本があるのですから、それに近いレベルに仕上げてほしかったです。
例えば下突きは、アドルが空中でしばらく制止し、それから真下に落下して攻撃します。この間、操作は受け付けないので位置を調整することが出来ません。このため降りてきたときに、すでに敵はかなり移動してしまっているという状態です。攻撃範囲が広いので当たりはするものの、どうもしっくり来ない、という感じですね。
三通りの振りが順次繰り出される通常の攻撃や、練金魔法なども、操作性や当たり判定の兼ね合いでうまく機能していない印象を受けました。
次にマップについてですが、セーブポイントがあったり、マッピングしやすくなった点は前作より良くなっています。とはいえ、洞窟でプレイヤーの意志に関係なく画面が回転するのには困りました。方位磁針のようなものもなく、今どの方角を向いているのかが分かりません。このためマッピングしないとすぐに迷子になってしまいます。これは、もう少し配慮が欲しかったです。
このように、シナリオの良さを引き立てるべき他の要素の大半が、ことごとく足を引っ張って全体としては標準以下の完成度になってしまった非常に惜しい作品。そんなイースVでした。(BGM・グラフィックは良かったのですが、さすがに上記のような欠点を相殺することはできていません) |
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▲有翼人はただのデザインではない
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▲練石の組み合わせで魔法が決定
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▲下突きはなかなか降りてこない
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▲洞窟の中はかなり迷いやすい
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いずれ他機種に移植することがあるなら、そのあたりをしっかり改善して、ゲーム全体として名作と呼べるものにしてほしいです。せっかくこれだけ良いシナリオなのですから・・・
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タイトーのイースV公式サイト
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