イース for X68000
ストーリー  ★★★☆☆ 
システム  ★★★★☆
音楽  ★★★★★
グラフィック  ★★★☆☆ 
忠実度  ★★★☆☆

 リアルな顔グラフィックで有名なX68000版イースをご紹介します。
 ストーリーは基本的に変更はなされていません。ただし、意味は同じでも言葉の表現が大幅に変更されているので、受ける印象はかなり違ったものになっています。雰囲気は独特のイメージに統一されており、従来のイースとは一線を画しています。一例として、いわゆる「お使い」的なイベントはことごとくカットされています。このため取引所でアイテムを売ることはなくなりました。セリフにおいても「精霊の加護」といった言葉が多用されているため、エターナルなどと比べると世界観がかなり異なっているのが分かります。ただし、変更、削除はされているのですが、ストーリー的に追加されたものはありません。このため、オリジナルよりも話が単純になっているような印象を受けました。
 ゲームシステムは特にアレンジはないのですが、敵キャラのパターンが変更されているため、戦闘はオリジナルとかなり異なっています。特に一新されたザコキャラのパターンが、スーパーファミコン版イース4に近く、とにかく動きが速いです。タイマーリングを装備した状態で、アドルと同じ速さで追ってくる敵がいるのには驚きました。しかも、X68000の性能を生かす意図なのか、同時に出現する敵の数が段違いに多く、速い敵に囲まれると脱出は不可能になってしまいます。半キャラずらしも他機種より難しく、通常の戦闘のアクション性はオリジナルより劣っているように思えました。しかし、同じくパターン変更されたボス戦はちょうど良い難易度を確保してあり、しかも攻略法が変わっているのでかなり楽しめるものとなっています。また、マップは一部が変更されており、草原が狭くなっていたり、廃坑が小さくなっていたりします。マップが小さくなったこととレベルアップが容易なため、かなり難易度は低めになっています。解き方を知っていれば4時間弱でクリアできるでしょう。個人的にはプレイしやすい難易度でしたが、初めての人には物足りないかも知れません。
 BGMに関してはかなり良い出来となっています。全体的にオリジナルのイメージを強化するというよりも、原曲を知っている人に聞かせるための冒険的なアレンジが多いように感じました。新曲も2曲あり、他にも同じ曲がシーンに合わせて異なる編曲で使用されているものもありました。ただし、新曲の曲調はあまりイースらしいものではなかった気がします。
 最も話題になった顔グラフィックですが、意外にも実際に見てみるとさほど違和感はありませんでした。確かに描き込まれた人物画は十分魅力あるものだったと思います。ただし、グラフィックはオリジナルとほぼ同じ場所でしか使用されておらず、レアやダルク=ファクトといった登場人物の顔を見ることが出来ませんでした。PCエンジン版のように会話時に表示するシステムを採用しても良かった気がします。ゲーム画面のグラフィックに関してはストーリー同様、イメージの変更が行われており、原作とは違った雰囲気で描かれています。ですが、確かに原作よりは美しいのですが、どこか単調な印象がありました。
 忠実度に関しては思っていたよりも高かったです。ストーリーは一切変更されておらず、マップも神殿や塔の中はまったく同じです。しかし、簡略化した部分はあるのに、追加されたところがない、というのはとても残念でした。アレンジも構いませんが、もう少しパワーアップに力を注いでほしかったです。
 全体として「雰囲気を変更したイース」という印象を受けました。グラフィック、追加されたBGM、セリフから受ける印象は原作とはかなり異なっています。難易度の低さも合わせて考えると、初めてイースをプレイする人よりも、オリジナルを知っている人の方が楽しめる作りだと思います。環境と機会が揃えば、気軽にプレイすると良いかも知れません。

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